『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』第9話 感想｜ディアナが“サーニャ”に戻りたかった夜

『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』第9話を見終えたとき、私の胸に残ったのは派手なバトルよりも、聖女ディアナの奥に眠っていた「サーニャ」の小さな痛みでした。聖女として持ち上げられ、力を失った途端に用済みと言われる彼女の姿に、どこか自分のことのような息苦しさを覚えた方も多いのではないでしょうか。

この記事では、第9話「それは誰にでもできることではないのですとお伝えしてもよろしいでしょうか」のあらすじを振り返りつつ、ディアナとディオスの兄妹関係、そして寝起きスカーレットの鉄拳が描き出した「名前」と「役割」のテーマを、アニメ研究家として丁寧に掘り下げていきます。ネタバレを含めて『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』第9話の感想・考察を知りたい方に向けた内容です。

また、SNSでの反応やファンの声も踏まえながら、「この回をどう受け止めればいいのか」「ディアナの裏切りは本当に裏切りなのか」といったモヤモヤに、ひとつずつ言葉を与えていきます。読み終わる頃には、あなた自身の中にある“サーニャ”と向き合いたくなるような、そんな記事になれば嬉しいです。

※この記事は2025年11月29日に更新されました。

『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』第9話あらすじ・感想・考察

第9話は、聖女ディアナとして生きることになったサーニャの過去と、現在進行形の戦争の気配が重なり合う、とても密度の高い一話でした。スカーレットが眠るあいだにも世界は動き続け、彼女のいない場所で誰かが傷つき、誰かが罪を重ねてしまう。

ここでは『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』第9話のあらすじを整理しつつ、ディアナとディオスの関係、そしてスカーレットの復活が物語にもたらした意味を、私なりの視点で丁寧に追いかけていきます。

第9話「それは誰にでもできることではないのですとお伝えしてもよろしいでしょうか」あらすじ整理

まずは7年前の回想から始まる本編パート。村娘サーニャはマリーと喧嘩し、「マリーなんて知らない」と意地を張ったその日、女神から聖女の力を授かり、「これよりあなたが聖女ディアナです」と告げられます。農村で生まれた普通の少女の人生が、ほんの一晩で塗り替えられてしまう瞬間です。

結界の力を見せたことで周囲の態度は一変し、母親は「聖女様のように優しい人になるのよ」と語りかける。優しい言葉に聞こえつつも、私の考えではここがサーニャから「普通の娘」という立場を奪う決定打になっていると感じました。以降、彼女は自分の意思とは関係なく、聖女ディアナとしての役割を背負わされていきます。

マリーと仲直りしようとすると先に頭を下げられ、その直後にディアナ聖教の一行が迎えに来る流れは、友達としての関係を回復するチャンスさえ世界に奪われていくようで、とても切ない描写でした。ここでスカーレットと出会い、「どうしてお姉さまは完璧なの？」と問うサーニャの戸惑いが、後のディアナとしての苦しさの予感にもつながっていきます。

ディアナとディオスの揺れる兄妹愛に見る第9話の感想

現在パートでは、テレネッツァの光の柱が結界を破り、数千の魔物と各国からの宣戦布告が重なることで、一気に「戦争前夜」の空気が濃くなっていきます。その一方で、スカーレットは長く目を覚まさず、ジュリアスたちは不在の“狂犬姫”の代わりに決断を迫られる。このギャップが、第9話全体の不安感をじわじわと高めていました。

そんな中で特に印象的だったのが、ディオスとディアナの対話です。聖女の力を失い「用済み」とされたディアナに、ディオスはパルミア教の力を使えば力を取り戻せると囁き、自分こそがスパイだと明かす。私の解釈では、これはただの誘惑ではなく、「失った役割を戻してあげる」という名目でディアナの心の弱さに付け込む行為でもあります。

しかし、ディアナは「これ以上裏切りたくない」と揺らぎながらも口にし、その行動原理が単純な裏切りではなく、サーニャとしての良心に根ざしていることが見えてきます。そして、スカーレットが寝起きにディオスを殴り飛ばし、本心を引きずり出そうとする流れは、『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』らしい痛快さと、人間ドラマの重さが同居した見どころだと感じました。

聖女ディアナかサーニャか──「名前」と「役割」をめぐるテーマ考察

第9話で強く浮かび上がるのは、「名前」と「役割」のズレです。サーニャであるはずの少女が聖女ディアナとして呼ばれ続けること、力を失った瞬間に価値を否定されること、そして腹違いの兄ディオスが「妹を守る兄」という役割にしがみつくあまり、スパイとして罪を積み上げてしまうこと。どれも、他者から与えられたラベルに心を押しつぶされていく構図に見えました。

私の考えでは、スカーレットの拳は単なる制裁ではなく、「ラベルから解き放つための乱暴な救い」として機能しています。ディオスに対して機密文書を破り捨て、「信用を取り戻したいなら心を打ち明けるべき」と迫る姿は、役割でごまかさず、本心をさらけ出した上で生き直せと言っているようでした。公式サイトのストーリー紹介でも、スカーレットが人の本音を引き出していく存在として描かれているのが印象的です（公式ストーリー）。

サーニャが「マリーなんて知らない」と言ってしまった過去に囚われ続けているように、誰の中にも消せない一言や選択はあります。それでもなお、スカーレットは「今、あなたにできることをしなさい」とディアナに伝える。与えられた役割に潰されそうになりながら、それでも自分で選び直すことは誰にも奪えない──第9話は、そんなメッセージを静かに、しかし力強く届けてくる回だったと感じました。

ディアナ回に湧いたファンの声とSNSリアクションまとめ

第9話は物語的な山場であると同時に、ファンの感情も大きく揺らした回でした。放送後のSNSタイムラインには、「ディアナがつらすぎる」「ディオスめんどくさいのに嫌いになれない」「寝起きスカーレットに全部持っていかれた」といった声が並び、視聴者それぞれの「推しポイント」がはっきり浮かび上がっていたのが印象的でした。

ここでは、公式の情報発信やファンの反応を踏まえながら、特に盛り上がっていたトピックを整理していきます。公式の場面カットや放送告知は公式ストーリーやアニメ公式Xでも確認できるので、映像と照らし合わせながら第9話を振り返ると、より立体的に楽しめるはずです。

寝起きスカーレットの鉄拳とディアナの過去に対する好評ポイント

まず一番盛り上がっていたのは、やはりスカーレットの「寝起き鉄拳」でした。眠りから目覚めた瞬間にディオスを殴り飛ばすという、姫としてはあまりにも物騒なリアクションが、ファンのあいだでは「これぞ狂犬姫」「起き抜け最高」と半ば祝祭のように受け止められていました。私も思わず笑いながら、「ああ戻ってきたな」と安心してしまった側です。

興味深いのは、そのコミカルさの裏で、ディアナの過去には真逆のトーンが流れていることです。農村の少女サーニャとして過ごした日々から、女神に選ばれ聖女ディアナに「変えられてしまう」過程は、SNSでも「こんな形で人生を奪われるのつらい」「名前を呼ばれなくなる怖さが刺さる」といった声が目立ちました。笑いと痛みが同じ回の中で共存していることが、第9話の大きな魅力として語られています。

私の感覚では、視聴者がスカーレットの鉄拳に喝采を送りつつ、ディアナの境遇にはそっと寄り添うようなコメントをしているのがとても象徴的でした。暴力的なカタルシスと、静かな共感の両方が同時に生まれているからこそ、「ただのざまぁ系では終わらない物語なんだ」と実感できた、という声にも大きくうなずかされます。

ディオスの動機や説明量に感じた賛否両論のポイント

一方で、ディオスまわりの描写については、少し賛否も分かれていました。腹違いの兄であり、「俺の妹超絶かわいくね？」と全力のシスコン宣言をしつつスパイ行為にも手を染めている彼に対して、「めんどくさいけど嫌いになれない」「行動はアウトだけど気持ちは分かる」という複雑な好意が向けられる一方、「動機の説明が一気に詰め込まれていて情報量が多い」と感じた視聴者もいたようです。

特に第9話では、パルミア教の暗躍、各国からの宣戦布告、数千の魔物の接近といった世界規模の情報が一気に提示されるため、「ディオス個人のドラマがやや駆け足に見えた」という感想も目にしました。私の考えでは、原作でじわじわ積み重ねられている要素をアニメ尺に圧縮した結果、やや“説明回”寄りに感じられた部分があるのだと思います。

とはいえ、「妹を守りたい」というディオスの感情が嘘ではない、と伝わっている視聴者が多いのも事実です。だからこそ、スカーレットが機密文書を破り、「信用を取り戻したいなら心を打ち明けなさい」と迫る場面は、「ここから本当の意味でやり直せるかどうか」の分岐点として好意的に受け止められていました。賛否はありつつも、「この先の描き方しだいで一気に推しになる可能性があるキャラ」として、ディオスへの期待値がむしろ高まった印象さえあります。

また、作画や演出面についても「バトルシーンの迫力は良かった」「一部カットでキャラの顔が気になった」など、細かな指摘が飛び交っていましたが、物語の転換点としてのインパクトが強かったためか、全体としては「気になるところはあるけれど、それ以上に続きが気になる」という前向きな温度感で落ち着いているように感じました。こうした細部へのツッコミも含めて、ファンが作品に本気で向き合っている証拠だと私は捉えています。

『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』第9話まとめ・次回への期待

第9話は、聖女ディアナとしての過去と、パルミア教を巡る戦争の気配が一気に立ち上がる、「心」と「世界情勢」の両方が揺れた回でした。スカーレットが眠り続けるあいだに、サーニャもディオスも自分の選択と向き合わされ、その余韻のまま物語は次の段階へと踏み出していきます。

ここでは、第9話までで積み上がってきたテーマを簡潔に振り返りつつ、第10話以降にどのような展開を期待できるのか、アニメファンとしての感情も交えてまとめていきます。戦争前夜の緊張感の中で、スカーレットたちがどんな「お願い」を自分自身に突きつけていくのか、一緒に想像してみましょう。

戦争前夜の緊張と第10話以降に期待したいスカーレットたちの選択

パルミア教の動きと周辺国からの宣戦布告が重なり、さらに数千の魔物が押し寄せてくる。第9話の終盤で描かれた状況は、まさにパリスタン王国にとっての「戦争前夜」でした。それでも一番怖く感じられたのは、魔物の数よりも、誰が誰を信じていいのか分からなくなっていく空気だったと私は思います。

ディアナは聖女として生きる道を選ばされたまま、裏切りと贖罪のあいだで揺れ続けています。ディオスは「妹を守る兄」であるはずが、その役割に縛られるあまりスパイとして罪を重ねてしまった。そしてスカーレットは、裏切り者を殴り飛ばすと同時に、「それでも生きて償いなさい」と背中を押す立場を受け入れている。三者三様の選択が、次回以降どのように交差していくのかが最大の見どころになるでしょう。

私の考えでは、第10話以降は「誰のために戦うのか」がより具体的に問われていくはずです。王国のためか、家族のためか、大切な一人の笑顔のためか。スカーレットの拳はいつだって痛快ですが、その拳が守ろうとしているものはとても繊細で壊れやすい。だからこそ、これからの戦いは単なるバトルではなく、それぞれのキャラクターが自分の役割を選び直すプロセスとして描かれていくと期待しています。

そして、テレネッツァたち敵側の描写にもしっかり尺が割かれている点は、『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』という作品の面白さを象徴しているように感じます。彼らもまた、何かしらの「お願い」を自分や世界に押しつけながら動いている存在なのかもしれません。第9話は、その後ろ姿をちらりと見せることで、視聴者に「この先も追いかけたい」と思わせる終わり方をしていたと私は受け取りました。

サーニャが自分の名前を取り戻せるのか、ディオスが本当の意味で妹の味方になれるのか、そしてスカーレットがどんな拳でこの世界を殴り直していくのか。あなたは誰の選択を一番見届けたいでしょうか。次回、第10話でそれぞれがどんな「最後にひとつだけお願い」を口にするのか、ファンとして一緒に見守っていきたいと思います。

【公式サイト・引用・参照】

• TVアニメ『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』公式サイト
• TVアニメ『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』ストーリー一覧
• TVアニメ『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』公式X
• アニメイトタイムズ『最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか』特集・インタビュー