軍神・楠木正成、第一印象が「めちゃくちゃヘコヘコする変なおじさん」なのズルいでしょ(笑)。ところが見ているうちに、その挙動不審さまで全部怖くなる。『逃げ若』、歴史上の大物を一発で忘れられないキャラへ変えるのが本当にうまいです。
第二十一回「その男、楠木正成」は、京観光の少年少女らしい空気が「帝殺し」で反転し、その直後に時行と同じく“逃げ”を武器にする軍神をぶつけてきた回でした。
公式の通算表記は第二十一回、第2期だけで数えると9話目です。ここでは第21話(2期9話)として扱います。
※この記事は2026年9月12日に更新されました
逃げ上手の若君 2期9話 感想|第21話の楠木正成、変なおじさんなのに怖すぎる
今回いちばん刺さったのは、楠木正成を「威厳たっぷりの名将」として出さなかったことです。腰は低い、頭はヘコヘコ、目線はキョロキョロ。それなのに時行は、自分と通じる“逃げ”の匂いを感じ取ります。
魅摩と京を遊び回る時間も尊かったんですが、西園寺邸へ戻った途端に出てくるのが「大罪」と呼ばれる計画。観光していた都が、そのまま政変の舞台へ変わる。この落差がヤバい。
しかも時行は、正体が割れれば危険な後醍醐天皇側の武将へ自分から近づく。逃げる才能は超一流なのに、未知の「逃げ上手」への好奇心からは全然逃げません(笑)。
楠木正成は何者?なぜ「軍神」で時行と同じ逃げ上手なのか
楠木正成は後醍醐天皇に仕えた実在の武将で、少数兵力と地形、奇策を使い、鎌倉幕府の大軍を苦しめた名将です。 『逃げ上手の若君』では、その戦い方を時行と通じる「逃げ上手」として描いています。
史実の正成は河内の赤坂城や千早城を拠点に戦いました。特に千早城では要害を利用し、幕府側の大軍を長く引きつけています。真正面から兵力差をひっくり返すのではなく、「相手が得意な勝負をしない」タイプの武将です。
時行の逃げは、まず自分の身体能力で死地から抜ける才能。一方の正成は、地形や敵の心理、兵の配置まで含めて「負けない場所を作る」方向へ逃げを軍略化している。集英社の第7巻紹介でも、時行が正成から「逃げの極意」を学び取ろうとする流れが示されています。
主人公の専売特許だった「逃げ」に、明確な先達が現れたのが面白い。しかも立場は後醍醐天皇側です。師匠になれそうな男が敵陣営にいる。このねじれ、南北朝ものの美味しいところです。
しかも正成の「逃げ」は臆病さの反対です。勝ち目の薄い正面衝突を避け、その代わり勝てる条件が整うまで相手を観察し続ける。時行が本能でやってきた生存術を、大人の武将が戦術として完成させているように見える。そりゃ時行も食いつきます。
楠木正成がヘコヘコ・キョロキョロする理由は?「スキャナー」の正体
楠木正成のヘコヘコ、キョロキョロした動きは、相手を立体的に観察して情報を集めるためです。 原作では、体格・姿勢・歩幅・間合いまで見ていると説明されています。
正成が初登場する原作第54話の題名は、そのまま「スキャナー 1335」。頭を上下左右へ動かす妙な所作が、相手の情報を読む技術になっています。偉そうに胸を張る武将とは真逆で、自分を小さく見せながら情報だけは抜いていく。
もちろん、史実の楠木正成が実際にあの動きで相手を観察していたという記録があるわけではありません。少数で大軍を翻弄した史実上の知略を、松井優征先生が「一目で分かる変人ムーブ」へ翻訳した漫画的な表現です。
これが時行と相性抜群なんですよ。二人とも「武士なら正面から堂々と戦うべき」という価値観から外れている。格好よく死ぬことより、生きて次の手を打つことを優先する。
ヘコヘコ顔芸で笑わせておいて、実は武士の常識をひっくり返す戦闘哲学を持っている。楠木正成、初登場から情報量が多すぎます(笑)。
「軍神」という肩書だけなら近寄りがたい英雄で終わります。ところが先に変な動きを見せ、その理由を知った瞬間に怖さへ反転させる。笑いから能力説明へつなぐ順番まで含めて、正成の初登場としてかなり強い設計でした。
西園寺公宗と北条泰家の「帝殺し」計画とは?何をしようとしているのか
西園寺公宗と北条泰家が進める「帝殺し」は、後醍醐天皇を暗殺して建武政権を揺さぶり、北条氏再興へつなげようとする計画です。 京で騒乱を起こすだけではなく、天皇本人を標的にするからこそ「大罪」として扱われます。
集英社の原作第7巻紹介でも、泰家が明かしたものを明確に「帝殺しの計画」としています。北条氏から見れば、後醍醐天皇は鎌倉幕府打倒の中心人物。泰家は西園寺公宗と組み、建武政権の中心を直接叩こうとしているわけです。
そしてこの陰謀は、漫画だけの完全な創作ではありません。国史大辞典・日本大百科全書系の解説を収録するコトバンクの「西園寺公宗」でも、公宗が北条泰家をかくまい、1335年に後醍醐天皇暗殺と北条氏再興を企てたことが記されています。
ここで面白いのは、時行が北条側だからといって泰家の策を無条件で歓迎しないことです。敵を倒せれば何でもいいのか、それとも越えてはいけない線があるのか。「北条を取り戻す」とは何を取り戻すことなのか、京編は少年の復讐をそこまで広げてきました。
そんな話の中で出会うのが、死ぬことではなく「生き残って勝つ」ことへ異様に長けた楠木正成です。帝を殺す近道と、自分が生きて未来をつなぐ技。時行の前に同時に置かれた二つの道として見ると、この回はかなり味わい深いです。
いやあ楠木殿、見た目は完全に変なおじさんなのに、もう一度見たくなる情報量がすごい。教科書の有名人を「次に何するんだ、この人」に変えてくれる瞬間は、歴史アニメの醍醐味です。時行が何を盗み取るのか、俄然楽しみになりました。
【公式サイト・引用・参照】
- TVアニメ「逃げ上手の若君」公式サイト 第二十一回「その男、楠木正成」
- 集英社コミック公式 S-MANGA『逃げ上手の若君』7巻
- 少年ジャンプ+『逃げ上手の若君』第54話「スキャナー 1335」
- コトバンク「楠木正成」
- コトバンク「西園寺公宗」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
第21話(2期9話)は楠木正成の登場だけで全部持っていかれました(笑)!
あのヘコヘコ動作から軍略の怪物が見えてくるのが最高です!

最初は完全に変なおじさんにゃ!
でも相手を観察する「スキャナー」だと分かると一気に怖くなるにゃ!

楠木正成や「帝殺し」の計画について感じたことも、ぜひSNSでシェアして意見を聞かせてください!

