おいおい、あの瘴奸を「死んでほしくない敵」にしてから再戦させるのか――。第2期11話(通算第二十三回)「続・わたしの仏様」は、鎌倉奪還の高揚感より先に、敵にも救われた人生があると突きつけてくる回でした。
瘴奸は確かに変わっています。かつて略奪を生きがいにした悪党は、小笠原貞宗のもとで地頭となり、領民を守る武士へ生き直しました。「続・わたしの仏様」は、第一期第九回で時行に敗れた瘴奸の救済が、一年越しで再び時行との戦いへつながる題です。
※この記事は2026年9月26日に更新されました
『逃げ上手の若君』2期11話 感想|救われた瘴奸を倒さなければ鎌倉へ行けない
今回いちばん刺さったのは、時行の成長以上に瘴奸の変化でした。第一期では子供すら金に換える外道だった男が、地頭として働き、領民から慕われるところまで来ている。そこへ「討つべき敵」として時行が戻ってきます。
普通なら因縁の悪党との再戦は爽快感へ振るところです。ところが『逃げ若』は先に「こいつ、ちゃんと生き直してるじゃん」を見せる。時行に倒す理由はある。それでも気持ちよく斬れない。この苦さを中先代の乱の直前へ置くのが実に松井優征作品らしい。
一方の時行も、もう守られて逃げるだけの少年ではありません。京で楠木正成から学び、尊氏暗殺の失敗も経験し、今度は自分が兵を率いて天下を取り戻す側へ進みます。
「続・わたしの仏様」の意味は?|第一期第9話で救われた瘴奸の続編
「続・わたしの仏様」は、第一期第九回「わたしの仏様」の直接的な続編です。公式あらすじでは、第九回の時行の一太刀を「地獄の闇を彷徨う鬼への救い」と表現しています。
あのとき瘴奸は、吹雪から授かった「鬼心仏刀」で戦う時行に追い詰められ、死の淵で時行を仏のように見ました。ところが彼は死なず、その後に小笠原貞宗の配下として生きる道を得ます。
だから「続」は再戦というだけではありません。一度は時行によって心を揺さぶられ、貞宗によって居場所を得た男が、今度は武士として時行の前に立つ。前の「仏様」が命を救う話なら、今回の「続」は救われた命をどう生きたかを見せる話です。
瘴奸は改心した?|悪党をやめ、地頭として領民を守っている
瘴奸は「改心した」と見ていいです。ただし過去の悪行が消えたわけではなく、本人もその罪から完全には逃げられていません。
原作第60話「悪党」では、小笠原貞宗から土地を与えられた瘴奸が地頭として働き、以前のような略奪へ戻ろうとする配下を止めています。領民からも仕事ができて領民思いの地頭として慕われ、子供から身を案じられるまでになりました。
ここが瘴奸というキャラの面白いところです。元から知恵も武力もあった。でも自分の土地も居場所もなく、その能力を「奪う」方向へ使っていた。貞宗が土地と役目を与えたことで、同じ能力が「守る」方向へ向き直ったんです。
目玉ギョロギョロで圧の強い貞宗ですが、人材を見る目は本当に侮れない(笑)。瘴奸をただ処刑するのではなく、働かせて武士へ戻した。その結果、時行にとって以前より倒しづらい敵が完成してしまいました。
なぜ今が鎌倉奪還のチャンス?|京の混乱で鎌倉の防備が薄くなったから
頼重が「時は満ちた」と判断した理由は、帝と足利尊氏への暗殺未遂で京が混乱し、関東の武士まで京の防備へ呼び寄せられたためです。公式あらすじでも、その結果として鎌倉が手薄になったことが明記されています。
兵力で足利方全体と正面衝突すれば、時行側に勝ち目は薄い。だから敵の主力が東国から離れた瞬間を突き、信濃から鎌倉へ一気に進む。尊氏暗殺は失敗しましたが、その事件が生んだ政治的混乱は、別の形で時行たちの好機になりました。
ただし信濃を出るには、信濃守護・小笠原貞宗を突破しなければならない。そこで頼重は戦場を分け、時行に瘴奸討伐を任せます。北条の名だけではなく、時行本人が大将として武士たちを従わせられるか。その試験でもあります。
二牙白刃とは?|第23話で用意された「対瘴奸専用」の新技
時行と吹雪が用意した新技の名は「二牙白刃(にがびゃくじん)」です。第一期で瘴奸を追い詰めた鬼心仏刀はすでに見せているため、観察力の高い瘴奸へ同じ手は通用しません。
第23話の段階で分かるのは、時行の「逃げ」を攻撃へ変える技であり、瘴奸を倒すために吹雪と仕込んだ秘策だということ。名前と訓練は見えても、なぜ瘴奸に刺さるのかという仕組みまではまだ隠されています。
これがうまいんですよ。瘴奸は力押しではなく、相手の手を読んで潰す知将です。なら「見破られない技」ではなく、見破る頭の良さそのものを利用する。吹雪らしい嫌らしい設計が待っています。
中先代の乱とは何?|1335年に北条時行が鎌倉奪還を目指して起こした戦い
中先代の乱は、1335年(建武2年)に北条時行が諏訪頼重らと信濃で挙兵し、鎌倉幕府再興を目指した戦いです。第23話は、作品が長く準備してきたこの大乱へ踏み込む直前に当たります。
「中先代」という呼び名は、鎌倉時代の北条氏を「先代」、のちの足利氏を「当代」としたとき、その間に位置する時行を「中先代」と呼んだことに由来します。ずっと正体を隠してきた若君が、歴史上の北条時行として表舞台へ出る大きな転換点です。
ここから先は、個人の仇討ちだけでは済みません。味方も敵も土地と家と民を背負ってぶつかる戦になります。その入口で瘴奸の「生き直し」を見せたのは、かなり残酷で、かなり効いていました。
ここからはアニメ第23話より先の原作ネタバレを含みます。
瘴奸はこのあと死亡する?|原作第64話で時行との再戦に敗れる
瘴奸は原作第64話「背中」で死亡します。時行と吹雪が用意した「二牙白刃」を受け、第一期から続いた因縁に決着がつきます。
二牙白刃の仕組みはかなり変態的です(笑)。吹雪が正面から本気で時行を刺し、時行はその刀を見ながら全力で真後ろへ逃げる。その逃げの速度をそのまま攻撃へ変え、背後にいる瘴奸を貫きます。
さらに、その前に時行は背中を向けたまま攻撃を避け続け、瘴奸に「吹雪の合図を見て回避している」と見抜かせます。瘴奸が吹雪へ注意を向け、時行から意識を外した瞬間が本命。策を看破する知性まで罠に組み込んでいるわけです。
原作8巻の公式紹介でも、この戦いは「瘴奸との最後の戦い」と明記されています。悪党として出会い、時行に一度救われ、貞宗のもとで武士へ戻り、最後はその時行と武士として戦って死ぬ。だから今回の改心描写が後から猛烈に効きます。
昔の瘴奸なら「ようやく倒した」で終われた。でも今は、帰りを待つ領民がいる。時行が天下を取り戻す道は、救われた人間の人生すら踏み越えて進む道でもある。中先代の乱を前に、その重さを先に見せた第二十三回でした。
【公式サイト・引用・参照】
- TVアニメ「逃げ上手の若君」公式サイト、第二十三回「続・わたしの仏様」
- TNCテレビ西日本、逃げ上手の若君第二期「続・わたしの仏様」#11
- アニプレックス、第一期第9話「わたしの仏様」ストーリー
- 少年ジャンプ+、『逃げ上手の若君』第60話「悪党 1335」
- 集英社、『逃げ上手の若君』8巻
- 少年ジャンプ+、『逃げ上手の若君』第64話「背中 1335」
- コトバンク、中先代の乱

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
逃げ上手の若君2期11話、瘴奸をここまで憎めない敵にするとは参りました!

「続・わたしの仏様」の意味を知ると、瘴奸との再戦がしんどすぎるにゃ!
中先代の乱の前に心を削ってくる作品にゃ!

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