鉄格子を糸鋸で切り、身分証を偽造し、逃走用の馬車まで用意する。ビクトリアさん、家庭教師の顔でやっていい仕事量ではありません(笑)。
第5話「いつかこの身にバチが当たることを」は、ビクトリアが工作員時代に身につけた手札を、組織の命令ではなく、自分の良心に従って切った回でした。
ただし、救出は綺麗な英雄譚では終わりません。カールと妹がどうなったのか、ビクトリアがなぜ危険を冒したのか、そして題名に込められた罪悪感が重く残ります。
※この記事は2026年8月5日に更新されました
手札が多めのビクトリア 5話 感想:法を破って人を救う、その手札がヤバい
今回の面白さは、ビクトリアの能力が単純に「強い」のではなく、やたら実務的なところです。
変装、演技、金属切断、偽造、馬の扱い、人を動かす嘘。派手な魔法はなくても、全部そろうと王城の牢獄すら突破できる。
しかも昼はクラークとノンナに、芝居を使った語学授業をしています。子どもを楽しませる演技と、牢番を欺く演技が同じ回に並ぶのがうまい。
工作員クロエの技能は、本来なら誰かを操り、国家の利益を守るための道具でした。ビクトリアは同じ技能を、目の前の兄妹に未来を渡すために使います。
ここで「手札が多い」という題名が、便利能力の自慢ではなく、生き方を選ぶ自由へ変わりました。
カールは脱獄できたのか?妹とその後どうなったのか
カールの脱獄は成功し、妹とも再会します。二人は王都から逃げ切り、アシュベリー王国南端の村で新しい身分を得て暮らし始めます。
原作でビクトリアは、恋人の「ケイト」を装って毎日面会し、高窓の鉄格子を少しずつ糸鋸で切断します。切断部分には黒い革を挟み、牢番が見ても異変に気づかないよう偽装しました。
脱獄当日、二人は高窓から外へ出て、あらかじめ隠しておいた出入り業者の服へ着替えます。
そのまま制服業者の荷馬車に乗り、荷台の空箱へ潜伏。城門が封鎖される前に王城を離れました。
南門近くでは妹が待っており、ビクトリアは兄妹へ偽造した身分証、馬と荷車、宿代、新生活の資金まで渡します。
逃がして終わりではなく、生き直すための土台を一式そろえたわけです。手札が多いにもほどがある。
その後、兄妹は南端の村で空き家と放棄された畑を借り、農作業をしながら慎ましく暮らします。
妹は、兄が処刑されるなら自分も同じ時刻に死ぬつもりでした。それでも二人は「復讐する努力より、幸せになる努力をする」と決めます。
カールは殺人者にならず、妹も絶望の中で命を捨てずに済みました。ビクトリアが救ったのは二人の命だけでなく、復讐以外の未来です。
ビクトリアはなぜカールを助けたのか
ビクトリアは、カールの行動を無罪だとは考えていません。
王族も出席する夜会へ毒を塗った刃物を持ち込み、侯爵を殺そうとした以上、王城側が重罪として扱うのは当然です。
妹を傷つけた侯爵も無傷では済まず、爵位を息子へ譲って隠居し、財務部の役職も失いました。しかし、命までは奪われません。
一方、復讐しようとした平民のカールには死罪が見込まれていました。ビクトリアは、この処分の差を黙って受け入れられなかったのです。
カールに理由を問われたビクトリアは、「私のためにやっている」と答えます。これは照れ隠しではありません。
組織にいた頃のクロエは、命令された相手を救い、命令された相手を陥れてきました。今のビクトリアは、自分が見過ごせないと思った相手を、自分の責任で救います。
兄妹を見捨てれば、安全な生活は守れたでしょう。しかし、それでは名前だけを変えても、命令に従うだけだったクロエの人生から抜け出せません。
カールを助けることは、ビクトリアが自分の良心を見捨てないための選択でした。
サブタイトル「いつかこの身にバチが当たることを」の意味とは
この題名が指す「罪」は、兄妹を救ったことそのものではありません。
ビクトリアは、真面目に職務を果たす牢番や、脱獄犯を必死に捜すジェフリーたちを欺き、余計な苦労を背負わせたことを自覚しています。
原作では、疲れ切ったジェフリーから捜索の話を聞いた後、彼女は心の中で真っ当な人々へ謝ります。そのうえで「許してくれとは言わない」と考え、自分にはいつか罰が当たると受け止めました。
後悔して救出を取り消したいわけではありません。正しい職務を妨害した罪も、法を破った責任も、自分で背負う。それでも兄妹を死なせる道は選ばないという覚悟です。
善人を助けたから自分は正義、では終わらない。誰かを救えば、別の善良な人へ負担が移ることもある。
その苦さまで題名に残したから、第5話はビクトリアを都合のいい万能ヒロインにしませんでした。
ビクトリアが脱獄させたことはバレるのか
第5話の直後には、ビクトリアの犯行だと証明されません。王城側が把握している協力者は、赤毛の女「ケイト」だけです。
牢獄の鍵は閉まったまま、鉄格子だけが切られ、二人は城門封鎖より先に移動しています。偽の身分と逃走経路も用意されているため、捜索隊はカールにも赤毛の女にも届きません。
ただし、完全に疑いをかわしたわけでもありません。
原作の先では、第三騎士団を実質的に動かすエドワード・アッシャーが、ビクトリアの身元調査、夜会の謎の女性、脱獄を手伝った赤毛の女を結び付けます。
エドワードは「赤毛の女はビクトリアではないか」と疑いますが、証拠はありません。彼女がジェフリーを救った恩人であり、自分もビクトリアを気に入っているため、すぐ宰相へ報告せず保留します。
犯行はまだバレていませんが、最も鋭い人物には正体を疑われ始めています。
完璧に見えた脱獄にも、今後へつながる細い糸が残りました。
罪を背負ってでも誰かを救うビクトリアが好きだ
ビクトリアは正義の味方を名乗らず、自分の判断が法に反していることも理解しています。
それでも、見捨てた後に自分を嫌いになる道より、罰を受ける可能性ごと引き受ける道を選びました。
工作員時代の手札が、ようやく彼女自身の人生を作るために使われ始めた。危なっかしくて、嘘つきで、それでも控えめに言って最高に優しい。
カール兄妹の畑に実るものが、二人だけでなくビクトリアの救いにもなってほしいです。
【公式サイト・引用・参照】
- TVアニメ『手札が多めのビクトリア』公式サイト
- テレビ東京『手札が多めのビクトリア』第5話 番組情報
- アニメイトタイムズ、第5話「いつかこの身にバチが当たることを」あらすじ・先行場面カット
- 小説家になろう『手札が多めのビクトリア』第25話 お芝居と事件の結末
- 小説家になろう『手札が多めのビクトリア』第27話 ノンナのお留守番(2)
- 小説家になろう『手札が多めのビクトリア』第28話 ノンナのお留守番(3)
- 小説家になろう『手札が多めのビクトリア』第42話 第三騎士団

ご覧いただきありがとうございます!
カール兄妹を救うため、手札を惜しまないビクトリアが最高の5話でした。

王城から脱獄させる家庭教師なんて、普通に考えたら危険人物にゃ!
でも格好よすぎるにゃ。

「バチが当たる」と覚悟する姿にも胸を打たれます。
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