本人は遠く離れた土地で羊と戯れているのに、残された男たちが「ビクトリアは何者だったのか」という核心へ迫っていく。8話、このすれ違いが切なすぎました。
「本当にありがとうって思うのよ」は、クロエの正体がアシュベリー王国に知られる一方、ビクトリア本人はマリアとして新しい人生を始める回です。そしてジェフリーは、彼女の正体を以前から薄々察していました。
※この記事は2026年8月26日に更新されました
『手札が多めのビクトリア』8話 感想:本人不在で正体だけが暴かれていくのが切ない
ビクトリアが何より恐れていた「クロエだった過去」が、本人のいないアシュベリーでついに表へ出ました。
ところが本人はもういない。黒髪のマリアとなり、少年に変装したノンナ=ライルとランダル王国で暮らしています。
この構成がうまいんですよ。アシュベリーでは暗殺部隊、諜報組織、尋問というバリバリのスパイもの。一方のランダルでは羊牧場で働き、毛糸を紡ぎ、ノンナと親子として暮らす穏やかな日常です。
どちらも同じ女性の人生なのに画面の温度がまるで違う。
クロエとして優秀すぎた過去が追いかけてくるほど、ビクトリアが求めていた「普通の暮らし」が尊く見えました。
ジェフリーはビクトリア=クロエの正体に気づいたのか?
結論から言えば、ジェフリーは以前からビクトリアが普通の女性ではないと薄々気づいていました。
そしてハグル王国の暗殺者を捕らえたことで、アシュベリー王国側は「ビクトリア・セラーズ=ハグル王国特務隊のエース工作員クロエ」という事実を把握します。
原作では、自白剤を使った尋問で、暗殺者が標的を「クロエ」と証言。クロエは27歳の特務隊のエースで、組織を脱走したため殺害命令が出された人物だと明らかになります。
そして宰相はジェフリーに、彼女の正体に気づいていたのかと確認します。
そこでジェフリーは「確証はなかったが、薄々気づいていた」と正直に回答。
いやジェフリー、そこは「何も知りませんでした!」で通せた場面なのに(笑)。宰相もわざわざ聞き返して逃げ道を作っているのに、嘘をつけない。
でも、この馬鹿がつくほどの誠実さこそジェフリーです。
クロエ時代のビクトリアは、人を疑い、嘘をつき、情報を隠すことで生き延びてきました。その彼女が好きになったのが、損をしてでも正直でいる男なのがいいんですよ。
ハグル王国の暗殺部隊はどうなった?誰が捕まえた?
ビクトリア=クロエを殺すためにアシュベリーへ送り込まれた暗殺部隊は4人です。
彼らはビクトリアとノンナが暮らしていたヨラナ夫人邸の離れを特定し、夜間に襲撃。3人が屋内へ入り、1人が外で見張る手はずでした。
しかしジェフリーたちはすでに待ち構えていました。
さらに暗殺情報を掴んでいた第三騎士団も動いており、侵入した3人も見張り役もすべて制圧。4人全員が王城の牢へ送られます。
その後、彼らは個別に収監され、自白剤を使った尋問を受けました。
ここで「クロエは特務隊のエース」「任務に失敗したからではなく、自分の意思で組織を抜けたため殺害対象になった」という事情まで判明します。
しかもハグルの工作員には、そもそも「仕事を辞める」という発想がありません。動ける限り組織で働き続け、脱走すれば裏切り者として処分される。
ビクトリアは転職したのではなく、自分の人生を取り戻すために国家組織から逃亡した人物だった。この事実が分かると、彼女が追手をあれほど恐れる理由にも納得できます。
さらに原作では、4人のうち見張り役の一人がアシュベリー側への情報提供者で、亡命を希望していたことも後に明らかになります。
逃げたいと思ったのはクロエだけではなかった。これ、ハグルという組織の異常さをかなり強烈に示しています。
マリアとライルの正体は?ノンナはなぜ男の子になった?
マリアの正体はビクトリア、ライルの正体はノンナです。
二人は追跡を避けるため黒髪に変え、ランダル王国へ移動。ビクトリアは母マリア、ノンナは息子ライルとして暮らし始めます。
さすが元工作員なのが、「マリア」という人物まで適当にでっち上げていないところ。
原作ではマリアは、8年前にランダル王国からアシュベリーへ入ったまま帰ってこなかった実在の行方不明女性です。ビクトリアは以前に調べていた身元情報を利用しました。
偽名を名乗るだけではなく、調査された場合に実在記録まで辿れる身分を使う。手札が多いってそういうことかよ(笑)。
ノンナを少年ライルにしたのも、二人組の特徴を変えて追跡されにくくするためです。
そして、ここからが尊い。
ビクトリアが「これからはマリアと呼んで」と頼むと、ノンナは名前だと間違えてビッキーと呼んでしまうから「お母さん」と呼びたいと申し出ます。
身元を隠すために必要になった新しい呼び方が、ビクトリアにとってずっと欲しかった家族の言葉になる。
工作員時代に身につけた変装や偽名が、今度は誰かを欺いて利用するためではなく、ノンナとの生活を守るために使われている。この変化がたまらんのです。
アシュベリー王国はビクトリアの正体を知ってなぜ追わなかった?
普通なら、他国の元エース工作員が偽名で国内に暮らしていたと判明した時点で大問題です。
しかしアシュベリー王国が選んだのは、ビクトリアを追跡して拘束することではありません。
国として「彼女の正体には気づかなかったことにする」と決めました。
国王の判断で、表向きのビクトリアは「ランダル王国の女性で、アシュベリー国内でハグルの人間に殺された」という扱いになります。
理由は明快です。ビクトリアが生きているとハグル側に知られれば、再び暗殺者が送り込まれる。外国の工作員に何度も国内へ侵入されるほうがアシュベリーには迷惑です。
情報収集という意味でも、第三騎士団は現役のハグル工作員を4人確保しています。居場所すら分からない元工作員ビクトリアを探し回る必要もありません。
国家としては合理的で、結果的にはビクトリアを守る判断になりました。
ただしジェフリーは、彼女の正体に薄々気づきながら報告しなかったことを正直に認めたため処分されます。
原作では騎士団長を解かれ、港町ハイデンを抱える領地の保安管理官へ異動。王都の表舞台から外れるため左遷ですが、ジェフリー本人も温情のある処分だと受け止めています。
何より切ないのは、アシュベリー側がもうビクトリアを敵として追わないと決めたのに、その事実を本人へ伝えられないことです。
ビクトリアは自分が「死んだこと」になったとも知らず、まだ追われる恐怖を抱えて身を隠している。
早く誰か教えてやってくれ……。
サブタイトル「本当にありがとうって思うのよ」の意味とは?
8話タイトルは、ランダルで暮らすノンナとビクトリアの会話から来ています。
ノンナが、ビクトリアはいつも「ありがとう」と言うことに気づく。そこでビクトリアが返したのが「だって本当にありがとうって思うのよ」という言葉です。
何でもない会話ですが、クロエからビクトリアへの変化をものすごく短く表しています。
クロエだった頃の彼女は、他人を観察し、利用価値を判断し、必要なら嘘をついて生きてきました。
今は、住み込みで働かせてもらえること、仕事を教えてもらえること、ノンナがそばにいること、作ったものを褒めてもらえることを素直に喜んでいます。
工作員時代なら情報価値ゼロの出来事ばかり。でもビクトリアが欲しかった人生は、こういう何でもない日々だった。
だから「ありがとう」は人間関係を円滑にするための技術ではありません。本当にありがたいから自然に出る。
クロエの正体が暴かれる回なのに、サブタイトルが諜報戦ではなく、この柔らかな一言なのがいいんですよ。
クロエではなくビクトリアとして生きるための8話だった
アシュベリーでは、クロエの過去がとうとう国家に知られました。一方の本人は、その過去から遠く離れた場所で「マリアお母さん」になっています。
名前だけ見れば、ビクトリアという名前さえ捨てて、また別人になった回です。
でも中身は逆でした。
誰かの命令で他人を演じるクロエではなく、自分で住む場所を選び、自分で働き、ノンナを抱きしめ、「ありがとう」と言う。偽名を重ねるほど、彼女はむしろ本当の自分になっています。
そして遠く離れたジェフリーも、彼女が何者だったのかを知ってなお切り捨てなかった。
あとはこの二人の人生がもう一度交わってくれれば……。ジェフリー、保安管理官の仕事も大事だけどマリア母子を見つけてくれ。羊牧場まで全力で走れ(笑)。
【公式サイト・引用・参照】
- TVアニメ『手札が多めのビクトリア』公式サイト STORY 第8話
- アニメイトタイムズ『手札が多めのビクトリア』第8話「本当にありがとうって思うのよ」あらすじ&場面カット
- 守雨『手札が多めのビクトリア』原作Web版 44「襲撃の夜」
- 守雨『手札が多めのビクトリア』原作Web版 45「牧場暮らし」
- 守雨『手札が多めのビクトリア』原作Web版 46「新しい任務地」

最後まで読んでいただきありがとうございます!
ビクトリアの正体が本人不在で暴かれる8話、切なかったですね。

ジェフリー、薄々気づいてたのに正直すぎるにゃ!
でもそこが信頼できる男なんだにゃ。

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