いや北条泰家、時行より叔父の方が逃げ上手じゃないですか(笑)。
『逃げ上手の若君』第二期7話、通算第十九回「ぼくのおじさん」は、時行の叔父・北条泰家の生存が判明する一方、玄蕃が「自分は何のために命を賭けるのか」と初めて立ち止まった回でした。
しかも泰家の逃亡劇は『逃げ若』だけの創作ではありません。史実として確認できる泰家の動向と、軍記物『太平記』に残された凄まじい逃走エピソードを分けて見ると、このおじさんの異常な生存力がよく分かります。
※この記事は2026年8月29日に更新されました
『逃げ上手の若君』2期7話の感想:時行より叔父の方が逃げ上手なのはズルい(笑)
今回いちばん印象に残ったのは北条泰家でした。鎌倉幕府が滅んだあの地獄から生き延び、東北を巡りながら北条残党と戦い続け、敗戦を重ねても諏訪までたどり着く。額の「やるぞ」と経歴の温度差が激しすぎます(笑)。
一方で、地味に重かったのが玄蕃です。
頼重たちが次の大戦へ動き始める中、玄蕃には時行のような討つべき仇も、弧次郎や亜也子のような忠義もない。これまでは金と損得で動いてきた男が、「戦争になっても俺はここにいるのか」と考え始めます。
そこへ現れたのが足利側の忍・天狗衆。玄蕃の技を「手品」と切り捨てるほどの力量差を見せつけました。
泰家は逃げ続けても戦うことをやめなかった男。玄蕃は逃げるか残るかを自分で選ばなければならない男。同じ「逃げ」をまったく違う角度から見せてきたのが面白い回でした。
北条泰家はなぜ生きていた?鎌倉幕府滅亡後どうやって逃げたのか
北条泰家は1333年の鎌倉幕府滅亡時に自害せず、鎌倉から脱出して生き延びていました。北条高時の弟なので、時行にとっては実の叔父です。
泰家は幕府滅亡直前、新田義貞を迎え撃つ幕府軍の大将として戦っています。東京都府中市の分倍河原古戦場碑の解説にも、北条泰家率いる幕府軍と新田義貞軍が戦ったことが記されています。
最終的に幕府軍は敗北。新田軍は鎌倉へ進み、北条高時をはじめ多くの北条一門が自害しました。
ところが泰家は逃げた。
軍記物『太平記』には、泰家が自害したように装って敵の目を欺き、血の付いた衣をまとって負傷した新田方の兵に見せかけ、鎌倉を脱出したという逸話が残されています。
やっていることが完全に潜入ミッションです。『逃げ上手の若君』という作品名を叔父が全力で回収してどうする(笑)。
ただし、『太平記』は南北朝時代を描いた軍記物です。泰家が幕府滅亡後も生き延びて活動したことと、この劇的な脱出方法の細部まで史実だったと断定することは分けて考える必要があります。
アニメ公式では、泰家は鎌倉陥落後に東北を巡り、北条残党とともに戦い続けたものの敗戦を重ね、最終的に諏訪へ流れ着いたと説明されています。
つまり今回突然生えてきた便利な親戚ではありません。時行とは別ルートで北条再興を諦めず、二年間も生き残っていた人物です。
その泰家が頼重と合流したことで、バラバラだった北条側の戦力が再びつながり始める。ここから物語はいよいよ中先代の乱へ近づいていきます。
天狗衆の正体は何者?史実にも存在した忍者なのか
天狗衆は『逃げ上手の若君』に登場する足利直属の忍集団です。玄蕃と同じく諜報や潜入を担いますが、この時点では玄蕃より明らかに格上の技術を持っています。
一方、「天狗衆」という名前の足利直属の忍者軍団が実在したことを示す史料は、現在確認されていません。作中設定をそのまま史実と考えるのは違います。
ただ、ここで面白いのが『太平記』です。
『太平記』巻十には「新田義貞謀叛の事 附 天狗越後勢を催す事」という項目があり、新田義貞の挙兵情報を「天狗」が驚異的な速さで越後へ伝えたという逸話が収められています。
『逃げ若』の天狗衆も情報収集や伝達を担う存在なので、この『太平記』の天狗伝説を下敷きにした設定と読むと非常にしっくりきます。
ただし、松井優征先生が「この逸話を元ネタに天狗衆を作った」と明言した公式資料は確認できません。ここは史実ではなく、作品と『太平記』を照らした上での私の読みです。
そして玄蕃にとって天狗衆は、単なる敵以上の存在でした。
これまで器用に仕事をこなしてきた玄蕃が、初めて「自分の技術ではまるで通用しない相手」に出会う。逃若党に残る意味を見失っているタイミングで、忍としての自信までへし折られる。そりゃキツい。
でも、この敗北が玄蕃を変えていきます。
玄蕃はなぜ逃若党を抜けようとした?時行を裏切るつもりなのか
玄蕃が逃若党を離れようと考えた理由は、時行を嫌いになったからでも、足利へ寝返ろうとしたからでもありません。「自分には命を賭けて戦う理由がない」と気づいたからです。
玄蕃は最初から忠義で動く武士ではありませんでした。
金をもらって仕事をする。危険なら逃げる。損得を冷静に計算する。それが玄蕃の生き方です。
ところが時行たちと行動を続けるうちに、いつの間にか「報酬をもらって手伝う」では済まないところまで来てしまった。
頼重たちが準備しているのは小さな潜入任務ではなく、本格的な戦争です。参加すれば死ぬ可能性も高い。そこで玄蕃は、自分だけには戦う大義がないことを自覚します。
この迷いはむしろ玄蕃らしいです。急に「時行様のためなら死ねます!」となった方が、それまで積み重ねてきたキャラクターが壊れます。
ここからはアニメ第19話より先の原作ネタバレを含みます。
結論から言えば、玄蕃は時行を裏切りません。
原作では天狗衆との遭遇をきっかけに、自分の技を研究し、新たな道具を開発する方向へ進みます。後には、かつて自分を圧倒した天狗衆を逆に欺くまで成長します。
つまり今回の迷いは「玄蕃離脱」の前振りではなく、玄蕃が自分の意思で逃若党にいる理由を作っていく転換点です。
時行は玄蕃に忠義を強制していません。だから玄蕃自身が「ここにいたい」と思える理由を見つける必要がある。
金で雇われた忍が、いつの間にか仲間のために自分の技を磨き始める。この変化、控えめに言って最高です。
『逃げ上手の若君』2期7話の締め:玄蕃が「逃げる理由」を選ぶ番が来た
北条泰家は幕府が滅んでも逃げ、生き延び、それでも北条のために戦い続けました。
玄蕃は逆です。逃げることを当然として生きてきた男が、「今回は本当に逃げるのか」と迷い始めた。
『逃げ若』は逃げることを卑怯とは描きません。だからこそ、自分で選んだ末に「逃げない」と決めることにも意味が生まれます。
愉快すぎる叔父が出てきた回だと思ったら、玄蕃の生き方まで静かに揺さぶってくる。第十九回「ぼくのおじさん」、後から効いてくるタイプの一話でした。
【公式サイト・引用・参照】
- TVアニメ「逃げ上手の若君」公式サイト「物語」第十九回 ぼくのおじさん
- 集英社『逃げ上手の若君』6巻
- アニメイトタイムズ『逃げ上手の若君』逃若党の忍・風間玄蕃の情報まとめ
- 東京都府中市「観光スポット」分倍河原古戦場碑
- 国立国会図書館『太平記 第2編』巻第十

最後まで読んでいただきありがとうございます!
北条泰家の逃亡劇、時行以上に逃げ上手で笑いました(笑)。

玄蕃の迷いに浸ってるのに、おじさんの額ばかり見てる変態にゃ!
天狗衆との再戦も楽しみにゃ。

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